2005 |
12,28 |
きれいでしょ? と彼女は得意気に笑った。
今度は独り言ではなく、俺に向けて。そう笑ってみせた。
彼女が俺に見せたかったモノは、夜闇の中、彼女の背後で万人に等しく煌めいていた。
けれど、俺には。
それよりも――。
てっきり俺は家路についたのだと思っていた。
電車に揺られ、最寄りの駅に着けば、バスに乗り継いだ。それはいたって平々凡々とした棲み家たる寺までの経路で。唯一、違っていたのは降りた停留所がいつもより二つほど前だったことだ。
「…………」
俺はあんぐりと口を開けて見てしまった。
「――ああ、こりゃ」
すげえな。
「すごいでしょう」
すごいけど、すごいにはすごいが、
「おい。南都……これって」
連れて来られた場所はよくある普通の公園である。 その中心には――。
「ふふん。なかなかの穴場なんだよね」
電球のコードに絡めとられた木は。
「……これって」
「銀杏の木よ」
「――すごいコラボ、だな」
「ま、こんなもんでしょ」
くすくすと喉のあたりで笑っている南都がいた。
こんな、モノか……。
こんなモノなのか。
「そうよ。こんなものよ」
太い幹にもみの木よりもみの木らしい枝ぶり。ショッピングセンターにあったそれよりも、当たり前だが大きく、地に根を張っている。
「さすが日本人って感じで私はこっちのが好き」
クリスマスと託けてそれらしきものなら、何でも飾り立ててしまう日本人という種はいい加減だ。
「信仰なんてあったもんじゃねーな」
「それがいいんじゃない」 悪戯心と遊び心。
「楽しければいいのよ」
その最たる犠牲者を俺は見たような気がした。
「クリスマスなんてそんなものよ」
この木には悪いけどね、と南都は舌を出してみせた。
「――でも、千秋がこの木になる必要はないよ」
今度は独り言ではなく、俺に向けて。そう笑ってみせた。
彼女が俺に見せたかったモノは、夜闇の中、彼女の背後で万人に等しく煌めいていた。
けれど、俺には。
それよりも――。
てっきり俺は家路についたのだと思っていた。
電車に揺られ、最寄りの駅に着けば、バスに乗り継いだ。それはいたって平々凡々とした棲み家たる寺までの経路で。唯一、違っていたのは降りた停留所がいつもより二つほど前だったことだ。
「…………」
俺はあんぐりと口を開けて見てしまった。
「――ああ、こりゃ」
すげえな。
「すごいでしょう」
すごいけど、すごいにはすごいが、
「おい。南都……これって」
連れて来られた場所はよくある普通の公園である。 その中心には――。
「ふふん。なかなかの穴場なんだよね」
電球のコードに絡めとられた木は。
「……これって」
「銀杏の木よ」
「――すごいコラボ、だな」
「ま、こんなもんでしょ」
くすくすと喉のあたりで笑っている南都がいた。
こんな、モノか……。
こんなモノなのか。
「そうよ。こんなものよ」
太い幹にもみの木よりもみの木らしい枝ぶり。ショッピングセンターにあったそれよりも、当たり前だが大きく、地に根を張っている。
「さすが日本人って感じで私はこっちのが好き」
クリスマスと託けてそれらしきものなら、何でも飾り立ててしまう日本人という種はいい加減だ。
「信仰なんてあったもんじゃねーな」
「それがいいんじゃない」 悪戯心と遊び心。
「楽しければいいのよ」
その最たる犠牲者を俺は見たような気がした。
「クリスマスなんてそんなものよ」
この木には悪いけどね、と南都は舌を出してみせた。
「――でも、千秋がこの木になる必要はないよ」
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