2005 |
12,24 |
南都はずずっと茶をすすった。確かにそれはその通りであると南都も思うが、果たして――。
「――……素性も知れない男と付き合える?」
「それはあんたのお父さんのお墨付きでしょう」
「……」
あれはお墨付きと言っていいものやら……。単に酒呑み仲間なら誰でも良かったような……。ぱっと南都の頭に繰り広げられたのは日毎の酒宴。
「佐々木さんは良くて今回はダメなの?」
「それは――」
「佐々木さんだって素性知れないじゃん」
「……一緒にしないでよ。元から記憶のないのと隠してるのとじゃ大違いよ!」
そうだ。そうなのだ。南都が千秋を信用できないのはひとえにそこにあるのだろう。
訳ありなのはなんとなく分かるが、それでも??。
「親父なんて『知らないが、悪い人間じゃない』の一点張りよ!」
それでは納得がいかない……!
仮にも家族同様の生活をするのだから。なにも知らず普通に善意で接せられるほど南都の懐は深くない。
「境内に寝てたから、連れ込んだんだっけ?」
「挙げ句、酒盛とお勤めを手伝えば、三食昼寝付き! なんてふざけすぎだっつーのッ」
「あはは! 南都の父親らしい!」
「笑い事じゃないわよ……」
「でも、南都が働かざる者食うべからず! とか言ったら、ちゃんといろいろと手伝ってくれてるんでしょ?」
「それは……」
「いいじゃない? 案外巧くやってんじゃん?」
「…………」
押し黙る南都とは対照的に千尋はからからと笑った。
結局のところ南都が相手とどのように相対して良いか分からず困惑しているだけで、相手を嫌いなわけではないのだ。その証拠にこの一週間南都の愚痴の行き着く先は父親に対してであり、居候への愚痴は減る一方である。まあ、本人は無意識のようだが。
「私も彼氏さえいなけりゃアプローチするのになあ」
「しちゃえばいいのに」
「何言ってんの」
「…………」
「そんな顔して」
さっぱりとした言葉と裏腹に恨めしい上目遣いで千尋を見上げてくる南都に千尋は破願した。
「どんな顔よ?」
「ま、嫌いじゃないなら、次の恋初めてもいいんじゃなーい?」
「千尋」
「さ、早く食べて次の授業行こうか!」
千尋は気難しい親友の、きつい視線もなんのそのでソテーを頬張ってみせた。
「――……素性も知れない男と付き合える?」
「それはあんたのお父さんのお墨付きでしょう」
「……」
あれはお墨付きと言っていいものやら……。単に酒呑み仲間なら誰でも良かったような……。ぱっと南都の頭に繰り広げられたのは日毎の酒宴。
「佐々木さんは良くて今回はダメなの?」
「それは――」
「佐々木さんだって素性知れないじゃん」
「……一緒にしないでよ。元から記憶のないのと隠してるのとじゃ大違いよ!」
そうだ。そうなのだ。南都が千秋を信用できないのはひとえにそこにあるのだろう。
訳ありなのはなんとなく分かるが、それでも??。
「親父なんて『知らないが、悪い人間じゃない』の一点張りよ!」
それでは納得がいかない……!
仮にも家族同様の生活をするのだから。なにも知らず普通に善意で接せられるほど南都の懐は深くない。
「境内に寝てたから、連れ込んだんだっけ?」
「挙げ句、酒盛とお勤めを手伝えば、三食昼寝付き! なんてふざけすぎだっつーのッ」
「あはは! 南都の父親らしい!」
「笑い事じゃないわよ……」
「でも、南都が働かざる者食うべからず! とか言ったら、ちゃんといろいろと手伝ってくれてるんでしょ?」
「それは……」
「いいじゃない? 案外巧くやってんじゃん?」
「…………」
押し黙る南都とは対照的に千尋はからからと笑った。
結局のところ南都が相手とどのように相対して良いか分からず困惑しているだけで、相手を嫌いなわけではないのだ。その証拠にこの一週間南都の愚痴の行き着く先は父親に対してであり、居候への愚痴は減る一方である。まあ、本人は無意識のようだが。
「私も彼氏さえいなけりゃアプローチするのになあ」
「しちゃえばいいのに」
「何言ってんの」
「…………」
「そんな顔して」
さっぱりとした言葉と裏腹に恨めしい上目遣いで千尋を見上げてくる南都に千尋は破願した。
「どんな顔よ?」
「ま、嫌いじゃないなら、次の恋初めてもいいんじゃなーい?」
「千尋」
「さ、早く食べて次の授業行こうか!」
千尋は気難しい親友の、きつい視線もなんのそのでソテーを頬張ってみせた。
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