2005 |
12,23 |
千秋と名乗る不審人物自ら出ていくしか……、
「これ! 幻の大吟醸だねえか!」
「それも完璧百パーセント純米酒だ」
「けどやっぱ新潟の酒が一番だと思うぜ」
「いやいや、そんなこともないぞ。この??」
(…………)
――ない、……のだが。
既に南都の眼が映す光景が現実なのにあまりに非現実に見えて、南都はふっと意識が飛ぶ、心ここに非ずな笑みが浮かべた。
怒る気持ちも萎えるとはこのことだろう。
そのあと、南都は速攻寝た。……寝たが、
早朝――。
『……こんなお経も上げられないのか!?』
『うるせー! 坊主じゃねえんだ! いちいち覚えてねーよっ! つーか、知らねえ!』
『知らないじゃないだろう!』
(…………)
『仮にもおまえ、眷属なんだろう? 知らないって……』
『だから、どうした? 知らねえもんは知らねえよ! こんな長いの覚えてられっかッ!』
「…………」
南都は布団から腕だけを伸ばしてむんずと目覚まし時計を掴み上げて布団の中に引き込む。
長針は……六の文字。短針は――……五の文字……。
つまり、
五時半――。
うぅぅぅと南都は唸り、掛け布団を引き寄せた。
『だいたい、眷属だから読める、上げられるという考え自体間違ってんだよ!』
『そうはいうが……普通そう思うだろう!』
『けッ 糞くらえだ!』
『――だったら』
母屋と本堂はあまり離れていない。毎朝、父親のお経は慣れっこであるが――、
(朝っぱらから……)
がばっと南都は起き上がり、
「いい加減にしてよッ!」
と、寝惚け眼に南都は叫んだ。
これは睡眠妨害だ……。
すると、しんと静まり返る。何もなかったように。
そして、うつらうつら南都に眠気が訪れる頃、長いお経は唱われ始めて。
こうして南都の静かな朝は終わりを告げた。お経の音量も二倍。それもときたま口論付きの騒がしい朝が突然襲来したのであった。
それから、二週間。
南都は電車に乗って人心地ついた。
ゆっくり動き出した車窓から見える景色はどんどん変わっていく。
それは本当にめまぐるしく、まるでここ最近の南都の生活そのもののようだ。
急速に早まってそれが普通だと走り続ける電車の揺れに身を委せ南都が思うのは、
……あのいけ好かない居候のことであった。
「これ! 幻の大吟醸だねえか!」
「それも完璧百パーセント純米酒だ」
「けどやっぱ新潟の酒が一番だと思うぜ」
「いやいや、そんなこともないぞ。この??」
(…………)
――ない、……のだが。
既に南都の眼が映す光景が現実なのにあまりに非現実に見えて、南都はふっと意識が飛ぶ、心ここに非ずな笑みが浮かべた。
怒る気持ちも萎えるとはこのことだろう。
そのあと、南都は速攻寝た。……寝たが、
早朝――。
『……こんなお経も上げられないのか!?』
『うるせー! 坊主じゃねえんだ! いちいち覚えてねーよっ! つーか、知らねえ!』
『知らないじゃないだろう!』
(…………)
『仮にもおまえ、眷属なんだろう? 知らないって……』
『だから、どうした? 知らねえもんは知らねえよ! こんな長いの覚えてられっかッ!』
「…………」
南都は布団から腕だけを伸ばしてむんずと目覚まし時計を掴み上げて布団の中に引き込む。
長針は……六の文字。短針は――……五の文字……。
つまり、
五時半――。
うぅぅぅと南都は唸り、掛け布団を引き寄せた。
『だいたい、眷属だから読める、上げられるという考え自体間違ってんだよ!』
『そうはいうが……普通そう思うだろう!』
『けッ 糞くらえだ!』
『――だったら』
母屋と本堂はあまり離れていない。毎朝、父親のお経は慣れっこであるが――、
(朝っぱらから……)
がばっと南都は起き上がり、
「いい加減にしてよッ!」
と、寝惚け眼に南都は叫んだ。
これは睡眠妨害だ……。
すると、しんと静まり返る。何もなかったように。
そして、うつらうつら南都に眠気が訪れる頃、長いお経は唱われ始めて。
こうして南都の静かな朝は終わりを告げた。お経の音量も二倍。それもときたま口論付きの騒がしい朝が突然襲来したのであった。
それから、二週間。
南都は電車に乗って人心地ついた。
ゆっくり動き出した車窓から見える景色はどんどん変わっていく。
それは本当にめまぐるしく、まるでここ最近の南都の生活そのもののようだ。
急速に早まってそれが普通だと走り続ける電車の揺れに身を委せ南都が思うのは、
……あのいけ好かない居候のことであった。
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