2005 |
12,20 |
「で、どうしてこれなの……?」
「ははは。まぁいいじゃないか」
反発するよりも前に差し出された徳利の前に俺は猪口を思わず差し出していた。
まぁ――……、
「……いいけどよぉ」
注がれれば、呑む。それはもう俺にとって自然なことであった。
それが美味い酒ならなお断る理由はない。
「あんたも変わり者だよねぇ」
こんな見ず知らずの人物を屋敷に招き入れるのだから。
「別にそんなことはないだろう」
「いいや。変わり者だね」
「そうか?」
「その証拠に何も訊かない」
そう。名前も職業も何故あの場にいたのかも、俺に対する何もかもこの住職は訊きはしない。
「それにこういう場に酒はねえだろう」
「いいじゃないか。好きなんだから」
「……生臭坊主」
「いやなら、茶にするが?」
その気もないくせに平気で言いやがる。食えない奴だという予感は確信に変わるのに時間はかからなかった。
「……これでいいよ」
「なら、黙って呑め」
「…………」
俺は静かにお猪口を傾けた。
「それに無料で泊めてやろうとしてるんだからな」
俺は片眉を跳ね上げて、……蒸せた。
何してるんだ? と住職の顔は言っている。が、俺の反応は当然だろう。
「……あんたバカか……?」
「本気だ」
「…………」
顔は笑っているが、相手の眼は笑っていない。
「見ず知らずのどこのどいつかも分からない輩を――」
泊めるというのか?
「ああ」
「本気かよ……」
「本気だと言ってるだろう?」
「信じられるかよ……」
一気に酔いが醒めるというものだ。
まあ、確かにと何食わぬ表情で徳利を傾けるのだからやはり食えない。
俺は注意深く相手を見た。そう簡単に人を信じられないというのは実に虚しいものだが、そうせざるを得ない経験を俺はしてきていた。
「そんなに警戒するな。『人助け』だよ」
「……『人助け』?」
「ああ」
俺は他人に助けられる覚えはない。そう言われる所以もない。
「泣いてる迷子を放っておけないだろう」
俺は眉をひそめた。
「なんだ。気が付いていないのか?」
まったくこりゃ参ったと住職は豪快に笑い出した。
「俺は迷子でもないし、泣いてもいない」
「ふうん」
「だから、助けられる謂われはない」
「じゃあ、何故仏様に会いに来た?」
「ははは。まぁいいじゃないか」
反発するよりも前に差し出された徳利の前に俺は猪口を思わず差し出していた。
まぁ――……、
「……いいけどよぉ」
注がれれば、呑む。それはもう俺にとって自然なことであった。
それが美味い酒ならなお断る理由はない。
「あんたも変わり者だよねぇ」
こんな見ず知らずの人物を屋敷に招き入れるのだから。
「別にそんなことはないだろう」
「いいや。変わり者だね」
「そうか?」
「その証拠に何も訊かない」
そう。名前も職業も何故あの場にいたのかも、俺に対する何もかもこの住職は訊きはしない。
「それにこういう場に酒はねえだろう」
「いいじゃないか。好きなんだから」
「……生臭坊主」
「いやなら、茶にするが?」
その気もないくせに平気で言いやがる。食えない奴だという予感は確信に変わるのに時間はかからなかった。
「……これでいいよ」
「なら、黙って呑め」
「…………」
俺は静かにお猪口を傾けた。
「それに無料で泊めてやろうとしてるんだからな」
俺は片眉を跳ね上げて、……蒸せた。
何してるんだ? と住職の顔は言っている。が、俺の反応は当然だろう。
「……あんたバカか……?」
「本気だ」
「…………」
顔は笑っているが、相手の眼は笑っていない。
「見ず知らずのどこのどいつかも分からない輩を――」
泊めるというのか?
「ああ」
「本気かよ……」
「本気だと言ってるだろう?」
「信じられるかよ……」
一気に酔いが醒めるというものだ。
まあ、確かにと何食わぬ表情で徳利を傾けるのだからやはり食えない。
俺は注意深く相手を見た。そう簡単に人を信じられないというのは実に虚しいものだが、そうせざるを得ない経験を俺はしてきていた。
「そんなに警戒するな。『人助け』だよ」
「……『人助け』?」
「ああ」
俺は他人に助けられる覚えはない。そう言われる所以もない。
「泣いてる迷子を放っておけないだろう」
俺は眉をひそめた。
「なんだ。気が付いていないのか?」
まったくこりゃ参ったと住職は豪快に笑い出した。
「俺は迷子でもないし、泣いてもいない」
「ふうん」
「だから、助けられる謂われはない」
「じゃあ、何故仏様に会いに来た?」
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