2008 |
05,31 |
«俺色12»
こうやって再び危険な闇戦国関係に首を突っ込んでしまった隆也は改めて千秋や清正たちの凄さを感じていた。
浄化させたり、鎮めたり、見守ったり、諌めたり、時に彼ら自身が社会の迷惑なることもあるが、彼らは身を挺して生き人の世界を守っていることに代わりはない。
そういった彼らに昔突っかかって行った自分がいた。何も知らず、知ろうとせず、一時の感情に任せてこの世界に死人が残ってちゃいけない、と。
今もあの時の想いに偽りはないし、考えだって変わっちゃいない。この考えに変わりはない――が、
「…………」
(生き人と死人の境界線か――)
隆也は無我夢中で突っかかっていた頃と同じではいられなかった。同じではいられないほど多くのことを知ってしまった。
全てのこの世に居残る霊が妹を乗っ取った霊のごとく卑劣な霊だったら良かったのに、と隆也は切に思うことがある。
隆也は彼らがこの世からすぐにでもいなくなってしまえば――なんてそう簡単には言えなくなってしまった。
矛盾していることは隆也自身だって分かっている。だけど、彼らだって生きているのだ。肉体を持って『生きている』からこそなのか、彼らは普通の人間と――生き人と同じように思考して喜怒哀楽がある。自分のことしか考えられない馬鹿な霊だけがこの世に残っているわけではない。自分たちのしていること――『換生』や『憑依』の重大さを、周りへの影響を重々理解している霊だっているのだ。
そんな彼らを、彼らのその行為をこの世に残ってはいけないという理由だけで簡単に断罪できるほど隆也は高慢にはなれないと思った。
自分の妹が乗っ取られたから赦せないのか。それが他人なら赦せてしまうのか。極刑が決まった極悪人の身体が善人の死人に乗っ取られるのはいいのか。その逆はダメなのか。
隆也自身の解答えは決まっている。だけど、後ろ髪を引かれるように感情が揺らぐのも事実であり――、
「千秋さん……」
思わず洩れた名前は四百年以上生きてきた人物の今生のものだ。
何もかもが現代人と変わりがないのに、死人という一点だけが違う。
けれど、彼なら隆也自身以上よりはっきり言うだろう。現代人だって情に流されてしまいそうな結論を。
――多分、彼らは彼ら自身で結論が出ている。
彼ら自身がどうするべきか、どう決着をつけるべきか。
だから、隆也は待つしかない。これ以上隆也が彼らの生きざまに口出すことは、彼らに失礼だと思うから。
(――でも)
隆也はそう思おうと、譲れないことだってある。
もしあんたが、このまま消えてくことを選ぶなら、(あんたが――……いるべき場所に戻らないというなら)
信じてるからこそ、
――俺はあんたを許さない。
浄化させたり、鎮めたり、見守ったり、諌めたり、時に彼ら自身が社会の迷惑なることもあるが、彼らは身を挺して生き人の世界を守っていることに代わりはない。
そういった彼らに昔突っかかって行った自分がいた。何も知らず、知ろうとせず、一時の感情に任せてこの世界に死人が残ってちゃいけない、と。
今もあの時の想いに偽りはないし、考えだって変わっちゃいない。この考えに変わりはない――が、
「…………」
(生き人と死人の境界線か――)
隆也は無我夢中で突っかかっていた頃と同じではいられなかった。同じではいられないほど多くのことを知ってしまった。
全てのこの世に居残る霊が妹を乗っ取った霊のごとく卑劣な霊だったら良かったのに、と隆也は切に思うことがある。
隆也は彼らがこの世からすぐにでもいなくなってしまえば――なんてそう簡単には言えなくなってしまった。
矛盾していることは隆也自身だって分かっている。だけど、彼らだって生きているのだ。肉体を持って『生きている』からこそなのか、彼らは普通の人間と――生き人と同じように思考して喜怒哀楽がある。自分のことしか考えられない馬鹿な霊だけがこの世に残っているわけではない。自分たちのしていること――『換生』や『憑依』の重大さを、周りへの影響を重々理解している霊だっているのだ。
そんな彼らを、彼らのその行為をこの世に残ってはいけないという理由だけで簡単に断罪できるほど隆也は高慢にはなれないと思った。
自分の妹が乗っ取られたから赦せないのか。それが他人なら赦せてしまうのか。極刑が決まった極悪人の身体が善人の死人に乗っ取られるのはいいのか。その逆はダメなのか。
隆也自身の解答えは決まっている。だけど、後ろ髪を引かれるように感情が揺らぐのも事実であり――、
「千秋さん……」
思わず洩れた名前は四百年以上生きてきた人物の今生のものだ。
何もかもが現代人と変わりがないのに、死人という一点だけが違う。
けれど、彼なら隆也自身以上よりはっきり言うだろう。現代人だって情に流されてしまいそうな結論を。
――多分、彼らは彼ら自身で結論が出ている。
彼ら自身がどうするべきか、どう決着をつけるべきか。
だから、隆也は待つしかない。これ以上隆也が彼らの生きざまに口出すことは、彼らに失礼だと思うから。
(――でも)
隆也はそう思おうと、譲れないことだってある。
もしあんたが、このまま消えてくことを選ぶなら、(あんたが――……いるべき場所に戻らないというなら)
信じてるからこそ、
――俺はあんたを許さない。
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