2005 |
12,19 |
雑踏は嫌だ。
そう思ったのはいつぶりだろうか。
自分は決してこの人の流れに身を委すことを嫌いではなかった。むしろ好んで身を委ねていたほうだと思う。
虚ろいやすい時間(とき)の流れ。それに流されいく自分自身。
俺はその感覚が嫌いではなかった。けれど、今はそれすらもが煩わしいと思える。
……時間の流れは――……想像以上に残酷で。
不変であることはなく、決して変わらないものがないのが自分自身だけ、だと嫌でも認識させられるものだ。
その感覚に悩まされ続けければ、俺の知るあの尊く強い魂でさえ疲弊は免れないのだ。
俺は皮肉気に口端を吊り上げた。
誰も頼ることは……できない、と思って天を仰ぐ。
「…………」
あの強い霊魂(たましい)でさえ蝕まれる時間という名の猛毒が俺自身から何を奪っていったのか。
少し乳白がかった空には雲はない。
結局、俺が行き着いた先は都会の真っ只中にある小さな寺院であった。都会を離れるわけでもなく、紛れるでもなく――……。
毘沙門天のおわす社。
「――結局」
俺の人生――……。
共にあり続けたのは――。
「あー……情けねえ」
こんなことぐらいでこんなに凹むなんて予想外だったと俺は頭を抱えた。
今頃になって――、
「……直江の気持ち分かったかも」
俺は力なく笑みを浮かべた。
あの人に絶対、忘れられるはずがないと思っていた俺の自信はどこから来ていたのか。
所詮、忘却には人間勝てはしないのだ。
四百年以上の絆だって意味をなさない……。
それでもどこかで……信じていた。ただの石ころが宝石であると信じて疑わなかったことが、
――……滑稽すぎて、
(――嗤っちまう)
そう思ったのはいつぶりだろうか。
自分は決してこの人の流れに身を委すことを嫌いではなかった。むしろ好んで身を委ねていたほうだと思う。
虚ろいやすい時間(とき)の流れ。それに流されいく自分自身。
俺はその感覚が嫌いではなかった。けれど、今はそれすらもが煩わしいと思える。
……時間の流れは――……想像以上に残酷で。
不変であることはなく、決して変わらないものがないのが自分自身だけ、だと嫌でも認識させられるものだ。
その感覚に悩まされ続けければ、俺の知るあの尊く強い魂でさえ疲弊は免れないのだ。
俺は皮肉気に口端を吊り上げた。
誰も頼ることは……できない、と思って天を仰ぐ。
「…………」
あの強い霊魂(たましい)でさえ蝕まれる時間という名の猛毒が俺自身から何を奪っていったのか。
少し乳白がかった空には雲はない。
結局、俺が行き着いた先は都会の真っ只中にある小さな寺院であった。都会を離れるわけでもなく、紛れるでもなく――……。
毘沙門天のおわす社。
「――結局」
俺の人生――……。
共にあり続けたのは――。
「あー……情けねえ」
こんなことぐらいでこんなに凹むなんて予想外だったと俺は頭を抱えた。
今頃になって――、
「……直江の気持ち分かったかも」
俺は力なく笑みを浮かべた。
あの人に絶対、忘れられるはずがないと思っていた俺の自信はどこから来ていたのか。
所詮、忘却には人間勝てはしないのだ。
四百年以上の絆だって意味をなさない……。
それでもどこかで……信じていた。ただの石ころが宝石であると信じて疑わなかったことが、
――……滑稽すぎて、
(――嗤っちまう)
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