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だ、駄文

二次創作のくだらない駄文置き場
2024
11,27

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2005
12,23
 千秋と名乗る不審人物自ら出ていくしか……、
「これ! 幻の大吟醸だねえか!」
「それも完璧百パーセント純米酒だ」
「けどやっぱ新潟の酒が一番だと思うぜ」
「いやいや、そんなこともないぞ。この??」
(…………)
 ――ない、……のだが。
 既に南都の眼が映す光景が現実なのにあまりに非現実に見えて、南都はふっと意識が飛ぶ、心ここに非ずな笑みが浮かべた。
 怒る気持ちも萎えるとはこのことだろう。
 そのあと、南都は速攻寝た。……寝たが、
 早朝――。
『……こんなお経も上げられないのか!?』
『うるせー! 坊主じゃねえんだ! いちいち覚えてねーよっ! つーか、知らねえ!』
『知らないじゃないだろう!』
(…………)
『仮にもおまえ、眷属なんだろう? 知らないって……』
『だから、どうした? 知らねえもんは知らねえよ! こんな長いの覚えてられっかッ!』
「…………」
 南都は布団から腕だけを伸ばしてむんずと目覚まし時計を掴み上げて布団の中に引き込む。
 長針は……六の文字。短針は――……五の文字……。
 つまり、
 五時半――。
 うぅぅぅと南都は唸り、掛け布団を引き寄せた。
『だいたい、眷属だから読める、上げられるという考え自体間違ってんだよ!』
『そうはいうが……普通そう思うだろう!』
『けッ 糞くらえだ!』
『――だったら』
 母屋と本堂はあまり離れていない。毎朝、父親のお経は慣れっこであるが――、
(朝っぱらから……)
 がばっと南都は起き上がり、
「いい加減にしてよッ!」
 と、寝惚け眼に南都は叫んだ。
 これは睡眠妨害だ……。
 すると、しんと静まり返る。何もなかったように。
 そして、うつらうつら南都に眠気が訪れる頃、長いお経は唱われ始めて。
 こうして南都の静かな朝は終わりを告げた。お経の音量も二倍。それもときたま口論付きの騒がしい朝が突然襲来したのであった。
 それから、二週間。
 南都は電車に乗って人心地ついた。
 ゆっくり動き出した車窓から見える景色はどんどん変わっていく。
 それは本当にめまぐるしく、まるでここ最近の南都の生活そのもののようだ。
 急速に早まってそれが普通だと走り続ける電車の揺れに身を委せ南都が思うのは、
 ……あのいけ好かない居候のことであった。
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2005
12,22
 南都はマフラーに顔を埋めずんずんと歩く。
 その得体の知らない人物・千秋が家に棲みついてから早一週間が経過しようとしていた。
 この千秋に対する南都の第一印象は最悪だった。
 まさか……まさか……、
(あの親父ッ)
 南都は心中で父親を詰った。
 それもそのはず。
 南都のいない間に知らない男を家に上げてたらふく酒を呑んでいるとは! それも父親と同じ年代の男ではなく若い男だなんて南都だって想像だにしなかった。
 まさか父子二人の生活、それもうら若き乙女が暮す家にお盛んな若い男を居候させるとは……南都の創造力を遥かに父の非常識ぶりは軽く越えた。
 だから、あの日、あの時、障子を開いたときの衝撃といったらそれはもう……。
 こら! 親父ッ! また呑んで! と叫ぶために大きく息を吸い、バッと障子を開いたはいいが。……南都が石化したのは言うまでもない。
「お邪魔してまーす。南都ちゃん」
 語尾にハートマーク。にっこり微笑むその顔はまさしく遊び人。どうみても軽そう……。
「おー紹介しよー! 南都。千秋くんだー」
 ……何が千秋くんだ、だ。クソ親父。
 誰なのよ!? コイツは!?
 と思ったって言葉にできるほど、南都の心と口は連動しない。
 そうこうしてるうちに、
「なっちゃん。当分世話になるからヨロシク~」
「!!」
 今、なんと言った。酔っぱらい……?
「南都~。ま、そういうことだから~」
「…………」
 世話になるって世話になるって……。
「……――て、どういうことよ……!?」
「そういうことだ」
ばっと南都の鋭い視線が刺さろうと意にも介さず親父は、お猪口に注がれた日本酒をくいっと飲み干してほざいた。
そして、
「あんたの親父さん。気前いいよなぁ。朝のお勤めと夜の晩酌付き合えば、三食昼寝付きだってよ!」
 乗らない手はないばかりににっと笑う不審人物。
(……信じられない。……信じられない。……付いてけない。……付いてけない)
 と、南都が思うのも無理はないだろう。というか、普通の反応だ。が、この家の法律はなんだかんだと父親で。
 不審人物と父親は南都を輪の外にすでに違う話題で盛り上がっていて……!
 父親自身に相手を追い出す気がなければ……。あとは――、
2005
12,22
「なっちゃーん~。行ってらっしゃ~い!」
「…………」
 和田南都(わだなつ)は朝だというのにどっと疲労が押し寄せてくるような感覚に襲われていた。
 普通、明るい「いってらっしゃい」の挨拶は活力を吹き込んでくれるものではないのだろうか。だが、しかし! 南都にとっては違った。
 これは南都に対するタオルを頭に巻いた作務衣姿の青年からの嫌がらせだ。なぜなら、南都がとことんその青年こと――自称・千秋を避けているからだ。
2005
12,21
「!」
 ああ……そうだ。俺は下唇を噛み締めた。
 何故って――……。
「まあ、答えを急ぐものではないさ」
「…………」
「いたいだけいればいい。それに??」

 ――仏様の眷属さんを無訝にはできないからなあ。

「! ……――あんた」
「ま、そういうことだ。朝のお勤めとコレに付き合ってくれるなら――」
 住職は徳利を掲げてにぃと笑ってみせて、
「三食昼寝つき。そう悪い条件じゃないだろう?」
 この台詞……。
 俺はなんとも言えず、口を閉じた。
 これでも永いこと生きている。世の中には、……こういう人物も、いる、ことは知っているが。
「……あんた何者だよ」
「しがない住職さ」
「んなわきゃねぇだろうが」
 今度、お猪口に酒を注ぐのは俺の番だった。
「売り渡すような真似されるのはゴメンだぜ」
「するなら、もうやってる」
 確かにその通りである。
 相手は余裕シャクシャクで俺の酌を受けて飲み干した。
(ああ、やはりこの人物――)
 予感的中といったところだろう。
「ああ、けど娘に手を出したら突き出すからな」
「娘いるのか? だったらあんたは本当の変わり者だよ。うら若き女と男を一つ屋根の下に住まわせるんだから」
「二人じゃない。俺もいる」
 俺はぷっと吹き出してしまった。
 だって、そうだろう?
 それはまさしく父親の顔だ。本当に心配している。なのにふんぞり返っているのだ。
(止めときゃいいのに)
「何がおかしい……?」
「いや、別に」
「親バカだと言いたいんだろう……?」
 住職の目は俺を捉えて据わっていた。
 この住職が親バカの何が悪い! と続けてくるのは予想もできたし、その会話に乗りたい自分に気が付いてしまえば、自然と口許が緩んだ。
「娘さん。あんたに似てないことを祈ってるよ」
2005
12,20
「で、どうしてこれなの……?」
「ははは。まぁいいじゃないか」
 反発するよりも前に差し出された徳利の前に俺は猪口を思わず差し出していた。
 まぁ――……、
「……いいけどよぉ」
 注がれれば、呑む。それはもう俺にとって自然なことであった。
 それが美味い酒ならなお断る理由はない。
「あんたも変わり者だよねぇ」
 こんな見ず知らずの人物を屋敷に招き入れるのだから。
「別にそんなことはないだろう」
「いいや。変わり者だね」
「そうか?」
「その証拠に何も訊かない」
 そう。名前も職業も何故あの場にいたのかも、俺に対する何もかもこの住職は訊きはしない。
「それにこういう場に酒はねえだろう」
「いいじゃないか。好きなんだから」
「……生臭坊主」
「いやなら、茶にするが?」
 その気もないくせに平気で言いやがる。食えない奴だという予感は確信に変わるのに時間はかからなかった。
「……これでいいよ」
「なら、黙って呑め」
「…………」
 俺は静かにお猪口を傾けた。
「それに無料で泊めてやろうとしてるんだからな」
 俺は片眉を跳ね上げて、……蒸せた。
 何してるんだ? と住職の顔は言っている。が、俺の反応は当然だろう。
「……あんたバカか……?」
「本気だ」
「…………」
 顔は笑っているが、相手の眼は笑っていない。
「見ず知らずのどこのどいつかも分からない輩を――」
 泊めるというのか?
「ああ」
「本気かよ……」
「本気だと言ってるだろう?」
「信じられるかよ……」
 一気に酔いが醒めるというものだ。
 まあ、確かにと何食わぬ表情で徳利を傾けるのだからやはり食えない。
 俺は注意深く相手を見た。そう簡単に人を信じられないというのは実に虚しいものだが、そうせざるを得ない経験を俺はしてきていた。
「そんなに警戒するな。『人助け』だよ」
「……『人助け』?」
「ああ」
 俺は他人に助けられる覚えはない。そう言われる所以もない。
「泣いてる迷子を放っておけないだろう」
 俺は眉をひそめた。
「なんだ。気が付いていないのか?」
 まったくこりゃ参ったと住職は豪快に笑い出した。
「俺は迷子でもないし、泣いてもいない」
「ふうん」
「だから、助けられる謂われはない」
「じゃあ、何故仏様に会いに来た?」

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