2009 |
02,11 |
«俺色15»
走って走って――、
(う、)
あるはずの床が、
「わぁぁァアアっ!」
――なくて、
「危ない!」
隆也の身体は前のめりに傾いだ。
傾いで隆也は浮遊感と重力を同時に感じたが、
ドサササァァー……。
その後当然感じるであろう痛みは感じなかった。
「痛っー……」
呻き声を上げたのは隆也ではない。
隆也は混乱していた。何が起きたのか理解できない。できないが――、
「……怪我はないかい?」
「!」
決して柔らかいとは言えないが固いわけでもない背に感じる。腰に感じる締め付け感。
横たわる隆也が下敷きにしているのは――、
「スミマセン!」
――……人間だ。
(う、)
あるはずの床が、
「わぁぁァアアっ!」
――なくて、
「危ない!」
隆也の身体は前のめりに傾いだ。
傾いで隆也は浮遊感と重力を同時に感じたが、
ドサササァァー……。
その後当然感じるであろう痛みは感じなかった。
「痛っー……」
呻き声を上げたのは隆也ではない。
隆也は混乱していた。何が起きたのか理解できない。できないが――、
「……怪我はないかい?」
「!」
決して柔らかいとは言えないが固いわけでもない背に感じる。腰に感じる締め付け感。
横たわる隆也が下敷きにしているのは――、
「スミマセン!」
――……人間だ。
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2008 |
08,09 |
«俺色14»
隆也の気持ちが本格的に滅入り出したその時だった。
コツ――、
「…………」
足を止めても、振り向きたくない心理とはまさしくこういう事態をいうのだろう。
隆也は振り向くことなく、背にビンビンにアンテナを張り巡らせて平常心を装い歩くことを選んだが――、
コツン……――コツン……。
隆也はばっと振り返ったが、
「…………」
誰もいず、足音も消えた。
タッタッタッ。
コツンコツンコツン。
隆也は再度立ち止まった。すると、怪しげな足音も止む。
「…………」
タッタッタッ。
コツンコツンコツン。
タタタッ。
コツコツコツ。
「…………」
(……うおーォォオッ)
堪らなくなった隆也は心の叫びと共に思いっきり走り出した。
得体の知れない影を追い払うために隆也は走った。本来の目的をそっちのけに一心不乱で走った!
コツ――、
「…………」
足を止めても、振り向きたくない心理とはまさしくこういう事態をいうのだろう。
隆也は振り向くことなく、背にビンビンにアンテナを張り巡らせて平常心を装い歩くことを選んだが――、
コツン……――コツン……。
隆也はばっと振り返ったが、
「…………」
誰もいず、足音も消えた。
タッタッタッ。
コツンコツンコツン。
隆也は再度立ち止まった。すると、怪しげな足音も止む。
「…………」
タッタッタッ。
コツンコツンコツン。
タタタッ。
コツコツコツ。
「…………」
(……うおーォォオッ)
堪らなくなった隆也は心の叫びと共に思いっきり走り出した。
得体の知れない影を追い払うために隆也は走った。本来の目的をそっちのけに一心不乱で走った!
2008 |
06,08 |
«俺色ブレイク»
今回は脱稿物を上げているのではないので、歩みがめちゃくちゃ遅くなっております。
で、長さが見えない(死)
前回の俺色は千秋だけを描いていれば良かったんですが、今回は2つの運命が交錯する予定なんですが……(汗)
うまく破綻せず書けるか……
本当に歩みおそいですが、よろしくお願いします。
ちなみに半分もきてないです(爆)
で、長さが見えない(死)
前回の俺色は千秋だけを描いていれば良かったんですが、今回は2つの運命が交錯する予定なんですが……(汗)
うまく破綻せず書けるか……
本当に歩みおそいですが、よろしくお願いします。
ちなみに半分もきてないです(爆)
2008 |
06,06 |
«俺色13»
「――はぁ……」
隆也は背に緊張を背負ったまま、息を吐いた。
堂々巡る自分の思考に自家中毒になりそうにもなるが、この空気に耐えるにはこれぐらい考えていないと澱んだ霊気にあてられて動けなくなりそうだった。
「……失敗したな」
隆也だけで解決できそうなら、解決して帰るつもりだったし、ダメそうなら原因を突き止めてから帰ろうと考えていた。しかし――、
――考えが甘かったようである。
とてもじゃないが、原因を突き止められる状況ではない。引き返せるかも危ういと思えてきた次第だ。原因が意思を持つ霊なら確実に隆也をこの空間に閉じ込めるだろうし、それを破るだけの霊力が隆也にあるかと聞かれたら、それについても自信はない。
進むか、退くか――、
「…………」
隆也は一旦立ち止まった。
入口には医学部とあった。なんのへんてつもない大学の研究棟である。
ただ違うのは、特段閉鎖されているわけでもないのに建物内には人一人歩いていない上に人がいる気配もないことだ。まだ、真夜中でもなく平日の午後だというのに、だ。
たぶん、自然と近寄れなくなったのだろうが、やはり――、
(気味が悪いよな……)
ここで何の研究してるんだよ……!? と生理的に眉をしかめたくなるぐらい不気味だった。
隆也は背に緊張を背負ったまま、息を吐いた。
堂々巡る自分の思考に自家中毒になりそうにもなるが、この空気に耐えるにはこれぐらい考えていないと澱んだ霊気にあてられて動けなくなりそうだった。
「……失敗したな」
隆也だけで解決できそうなら、解決して帰るつもりだったし、ダメそうなら原因を突き止めてから帰ろうと考えていた。しかし――、
――考えが甘かったようである。
とてもじゃないが、原因を突き止められる状況ではない。引き返せるかも危ういと思えてきた次第だ。原因が意思を持つ霊なら確実に隆也をこの空間に閉じ込めるだろうし、それを破るだけの霊力が隆也にあるかと聞かれたら、それについても自信はない。
進むか、退くか――、
「…………」
隆也は一旦立ち止まった。
入口には医学部とあった。なんのへんてつもない大学の研究棟である。
ただ違うのは、特段閉鎖されているわけでもないのに建物内には人一人歩いていない上に人がいる気配もないことだ。まだ、真夜中でもなく平日の午後だというのに、だ。
たぶん、自然と近寄れなくなったのだろうが、やはり――、
(気味が悪いよな……)
ここで何の研究してるんだよ……!? と生理的に眉をしかめたくなるぐらい不気味だった。
2008 |
05,31 |
«俺色12»
こうやって再び危険な闇戦国関係に首を突っ込んでしまった隆也は改めて千秋や清正たちの凄さを感じていた。
浄化させたり、鎮めたり、見守ったり、諌めたり、時に彼ら自身が社会の迷惑なることもあるが、彼らは身を挺して生き人の世界を守っていることに代わりはない。
そういった彼らに昔突っかかって行った自分がいた。何も知らず、知ろうとせず、一時の感情に任せてこの世界に死人が残ってちゃいけない、と。
今もあの時の想いに偽りはないし、考えだって変わっちゃいない。この考えに変わりはない――が、
「…………」
(生き人と死人の境界線か――)
隆也は無我夢中で突っかかっていた頃と同じではいられなかった。同じではいられないほど多くのことを知ってしまった。
全てのこの世に居残る霊が妹を乗っ取った霊のごとく卑劣な霊だったら良かったのに、と隆也は切に思うことがある。
隆也は彼らがこの世からすぐにでもいなくなってしまえば――なんてそう簡単には言えなくなってしまった。
矛盾していることは隆也自身だって分かっている。だけど、彼らだって生きているのだ。肉体を持って『生きている』からこそなのか、彼らは普通の人間と――生き人と同じように思考して喜怒哀楽がある。自分のことしか考えられない馬鹿な霊だけがこの世に残っているわけではない。自分たちのしていること――『換生』や『憑依』の重大さを、周りへの影響を重々理解している霊だっているのだ。
そんな彼らを、彼らのその行為をこの世に残ってはいけないという理由だけで簡単に断罪できるほど隆也は高慢にはなれないと思った。
自分の妹が乗っ取られたから赦せないのか。それが他人なら赦せてしまうのか。極刑が決まった極悪人の身体が善人の死人に乗っ取られるのはいいのか。その逆はダメなのか。
隆也自身の解答えは決まっている。だけど、後ろ髪を引かれるように感情が揺らぐのも事実であり――、
「千秋さん……」
思わず洩れた名前は四百年以上生きてきた人物の今生のものだ。
何もかもが現代人と変わりがないのに、死人という一点だけが違う。
けれど、彼なら隆也自身以上よりはっきり言うだろう。現代人だって情に流されてしまいそうな結論を。
――多分、彼らは彼ら自身で結論が出ている。
彼ら自身がどうするべきか、どう決着をつけるべきか。
だから、隆也は待つしかない。これ以上隆也が彼らの生きざまに口出すことは、彼らに失礼だと思うから。
(――でも)
隆也はそう思おうと、譲れないことだってある。
もしあんたが、このまま消えてくことを選ぶなら、(あんたが――……いるべき場所に戻らないというなら)
信じてるからこそ、
――俺はあんたを許さない。
浄化させたり、鎮めたり、見守ったり、諌めたり、時に彼ら自身が社会の迷惑なることもあるが、彼らは身を挺して生き人の世界を守っていることに代わりはない。
そういった彼らに昔突っかかって行った自分がいた。何も知らず、知ろうとせず、一時の感情に任せてこの世界に死人が残ってちゃいけない、と。
今もあの時の想いに偽りはないし、考えだって変わっちゃいない。この考えに変わりはない――が、
「…………」
(生き人と死人の境界線か――)
隆也は無我夢中で突っかかっていた頃と同じではいられなかった。同じではいられないほど多くのことを知ってしまった。
全てのこの世に居残る霊が妹を乗っ取った霊のごとく卑劣な霊だったら良かったのに、と隆也は切に思うことがある。
隆也は彼らがこの世からすぐにでもいなくなってしまえば――なんてそう簡単には言えなくなってしまった。
矛盾していることは隆也自身だって分かっている。だけど、彼らだって生きているのだ。肉体を持って『生きている』からこそなのか、彼らは普通の人間と――生き人と同じように思考して喜怒哀楽がある。自分のことしか考えられない馬鹿な霊だけがこの世に残っているわけではない。自分たちのしていること――『換生』や『憑依』の重大さを、周りへの影響を重々理解している霊だっているのだ。
そんな彼らを、彼らのその行為をこの世に残ってはいけないという理由だけで簡単に断罪できるほど隆也は高慢にはなれないと思った。
自分の妹が乗っ取られたから赦せないのか。それが他人なら赦せてしまうのか。極刑が決まった極悪人の身体が善人の死人に乗っ取られるのはいいのか。その逆はダメなのか。
隆也自身の解答えは決まっている。だけど、後ろ髪を引かれるように感情が揺らぐのも事実であり――、
「千秋さん……」
思わず洩れた名前は四百年以上生きてきた人物の今生のものだ。
何もかもが現代人と変わりがないのに、死人という一点だけが違う。
けれど、彼なら隆也自身以上よりはっきり言うだろう。現代人だって情に流されてしまいそうな結論を。
――多分、彼らは彼ら自身で結論が出ている。
彼ら自身がどうするべきか、どう決着をつけるべきか。
だから、隆也は待つしかない。これ以上隆也が彼らの生きざまに口出すことは、彼らに失礼だと思うから。
(――でも)
隆也はそう思おうと、譲れないことだってある。
もしあんたが、このまま消えてくことを選ぶなら、(あんたが――……いるべき場所に戻らないというなら)
信じてるからこそ、
――俺はあんたを許さない。
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