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だ、駄文

二次創作のくだらない駄文置き場
2024
04,30

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2008
04,29

«俺色11»

「あー……」
 なんだかな、と鳥越隆也はミネラルウォーターをぶらぶら持ちながら例の大学敷地内を歩いていた。
 そして、適当な場所にその水を振り撒いた。
 加持祈祷を受けた水でもなんでもないが、それなりに有名な(はずの)山水は速効性の浄め水程度としては使える。
(つか、こんな空気の悪いとこ歩いてられっかよ……)
 隆也はぶつぶつと内心で文句を言うことで、緊張を紛らわせながら進んでいた。
 この不浄の原因かつ根本的な解決が目的であったが、それどころではない。例えて言うなら、開けた扉の先は足の踏み場もないゴミ溜めの部屋に踏み込んだ時の感想だ。とにかく片付けたくなる衝動に近い。けど,片付けられる状況でもないので獣道ぐらいは確保しようという感じである。
「これ一本じゃ足りないよな……」
 校内の自販機で買った水もあと少しでなくなる。
 勿論、これっきりの水の量で全てを浄化することはできない。結界を創るのにだって勿論足りない。……原因となってる建造物に入ることだってままならないかもしれない。
 分相応という言葉があるが――。
「……やるしか、ないんだよな……」
 隆也は目の前にそびえ立つ不気味な建物をねめつけた。
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2008
04,26
「だから、たまにそういう類いの依頼が舞い込むのよ」
「…………」
「塩巻いて終わる程度のならね。私も今、父いないから程度で済むんだけど」
「それ程度で済みそうにないってか……?」
「それは現場に行ってみないと――」
「その現場に独りで行く気だったんだな」
「…………」
 押し黙るということは図星だったのだろう。
「おまえは勉強してろ」
「でも!」
「んな、危ねぇことさせられるかよ……」
 俺が嘆息混じりに吐き出せば、南都はムッとしたそれでいて恨めしそうにこちらを見ていた。
 言いたいことは分かる。
 ――千秋だって同じじゃない、と目がモノを言っている……。
 南都と――『現代人』と同じだったら、どれだけ良いと考えたか。
「……何よ?」
「下見ならおまえじゃなくてもできるっつってんだよ」
「千秋一人で行くの?」
「俺はおまえと違って暇人だからな」
「そうだけど――」
 否定しない南都に対して、この野郎……家事っつー仕事も案外忙しいんだぞ、と内心で反論しつつも、やはり霊的な問題なら俺一人のがやはり作業は効率がいい。
 疑り深い視線に対して俺は意地悪く笑んだ。
「心配してくれるのか?」
「な!」
 見開いた瞳がぱっちりと瞬く。ぱっくりと開いた口が動き出すのに一呼吸かかり、
「ちょ、調子に乗らないでよ!! なんで私が……!」
 こういう意地っ張りなところが俺の悪戯心を誘うのだろう。
「またまた~、俺のために泣いてくれたってのに」
「あ、あれは!」
 人間行き詰まると実力行使になる。彼女がそうするまでに時間がかからないのはその真っ赤に燃え上がった顔から明らかだった。
2008
04,21
「で?」
「ん?」
 俺は脱線しかけた思考を現実に戻した。
「親父に用事があったんじゃないのか」
 ああ、と南都は今思い出した! というように相槌を打つ。こういう惚けた態度は親子なだけ栄明とよく似ていると思う。
「ちょっと頼まれちゃってね……」
 何を? と俺が尋ね返せば、南都は微妙な笑みを浮かべた。
 絶対ぇコイツは俺が聞かなければ、煙に巻く気満々だったのだ。今だっていかにはぐらかそうか思案中なはずだ。
「……あのなぁ、南都」
 俺はほんの少し声のトーンを下げた。
「何かがあってからじゃ、遅ぇんだぞ?」
 そう、南都に何かがあってからじゃ遅いのだ。なんだか分からない栄明の信頼の下に俺は現在、彼女の保護者とみなされている。まぁ、南都にとっては不本意だろうが。
 案の定、彼女の眉は感情を表現してみせた。
「おめーが警察とか救急車の世話になったら、て考えたことあるか?」
「…………」
「俺たちの関係をどう説明するつもりなんだ?」
 実は問題はそれだけじゃない。突き詰められると非常に困ることが多い。
 例えば、俺の素性についてや、住職代理のくせに坊主の免許が無いことについてなどである。対外的に寺としての面子がよくないことが多く、近所の評判が悪くなることが殆どだ。
 そんなことも分からないほど南都も馬鹿ではない。
 南都はふーッと息を吐いて肩を竦めた。
「これから話す話を信じる信じないは……千秋に任せるわ」
「…………」
「ただ世の中には存在するのは目に見えるだけのものじゃないこと」
 淡々と語るのは、信じてないからではないだろう。信じてるからこそ声音は平静を保とうと動く。
「父さんはそういった類いのものを相手にしてた」
 信じるも信じないも――南都が言わんとすることは。
 俺は心中で嘆った。
 ああ、分かってるさ。……俺が俺の領域(テリトリー)から逃れられないことなんて……とうの昔に分かってる。いつかはまた直面する――『現実』。
 俺は静かに南都の次の言葉を待った。
2008
04,15

«俺色8»

 この寺の住職は高野山所属の坊主で、案外、高僧であったりする。
「は!? 節分までに帰れないだと……!?」
 俺は苛立ちを露に受話器に対して怒鳴った。その横で南都は俺が作った豚汁(鶏肉入り)を澄ました顔ですすっている。
 南都は大概、栄明から電話がかかってきた理由なんて予想がついていたのだろう。
「…………ッ」
 ブチッ
 ツーツーツー……
「で、お父さん何だって?」
「…………」
 分かってるくせに……あぁ……頭の痛い話だ……。
 俺は再び食事を始めた。 勿論、俺の味付けは関東風だったが、少し味が濃かっただろうか。
「ま、仕方ないか」
 南都の呟きは呟いた。
「なんだかねー、うちのお父さん、あの全国的幽霊騒ぎ?――前までは血気盛んだったんだけど、いきなり変わっちゃった上にアレでも家庭省みるようになったのよ」
「…………」
「修行だって言って三年帰らなかったこともあったし、まー高野ではそれなりに出世コースだったぽいから仕方ないかな、て私も母も思ってたけど」
 南都は……本人気がついてるかは知らないが、本当に嬉しそうににこーっと笑んだ。
「出世街道はずれたのかしらね」
「…………」
 まぁ……間違いなく景虎たちの影響を受けた結果だろうが、高野からいまだに呼び戻されてるところを見れば、栄明自らが出世街道を外れたとみたほうが妥当だろう。
 奴らの――いや、景虎の影響の大きさに俺はつくづく嘆息しか出てこない。
(ッたく、テメー一人のせいで何人の人生狂ったか……)
 もう二度と、……二度と面と向かって抗議できないと分かっていても――それをどんなに納得しようとしたって――……そんなに簡単に納得なんてできるわけがないんだよ!ったく……、
(本当、後始末する身にもなりやがれっての!! )
 だから、いつまででも俺は俺らしい方法でアイツを忘れないことに最近、決めたのだ。
2008
04,12

«俺色7»

 大根、人参に白葱と蒟蒻で……鶏肉か豚肉か、まぁあるほうを入れればいいかとばかりに俺は野菜を刻みだした。それ以外は――、
 包丁を持つ手はそのままに考える。白飯と漬物、メインが……、
「冷凍イカがあったでしょ?」
 俺の思考に割って入ってきたのは、買い物袋を片手に台所に顔を覗かせた南都だ。
「よ、お帰り」
 ひょっこりと暖簾から顔を出している南都は、ただいまと言いつつ台所へと入ってくる。
「今日は早いな」
「うん、まー試験もあと一つだしね」
 南都は今時の女子大生ではあるが、親が親だけあって苦労してきたのかたいしてチャラチャラした感じはない。今日だって勉強してから帰ると言っていた。
「食事できるまで部屋で勉強してても構わないぜ?」
「……うん」
 俺の野菜を刻むリズムは相変わらず、ただいつもと違うのは――、
「南都?」
 俺は振り向いた。
 南都は俺をまじまじと見ていた。
「……なんだよ」
「…………」
 物言いたげな視線が俺の眉間に皺を寄せさせた。
「千秋って――」
「ん?」
 続きを言いそうな口は空気を吐き出さない。待っている間にその口はゆっくりと閉じられ、言葉の代わりに溜め息が吐かれた。
 一体なんなんだ?
 何でもないと首を振る南都に対してますます俺の眉間の皺は深くなる。
「……言ってみろよ?」
「ん、いいんだ」
「だから、何なんだよ」
「いいんだって、ほら千秋って霊感ないでしょ?」
 ……は?
「だから、いいんだっていくら代理住職ってもできることとできないことがあるからね」
 着替えてくると出ていった南都をひたすら俺は呆然と見送った。

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