2005 |
10,17 |
«29»
「おまえ今どこにいる?あのさ――……」
にんまりと声色通りの表情をして……。
(……)
安田長秀という男――やはり……よく解らない。
と、唖然と事の成り行きを見守る清正であった。
それにしても四百年をも共にした仲間だろうに……。それも唯一この世に残る仲間では――ないのか……?
「!」
すると出し抜けに奴と視線がぶつかった。電話片手にニッと笑って片目を瞑られる。
「んじゃ待ち合わせは――」
……どうやら『金ヅル』確保が成功した合図だったようだが、どうも心臓に悪い……。
が、相手はまったく気にしていない。
にんまりと声色通りの表情をして……。
(……)
安田長秀という男――やはり……よく解らない。
と、唖然と事の成り行きを見守る清正であった。
それにしても四百年をも共にした仲間だろうに……。それも唯一この世に残る仲間では――ないのか……?
「!」
すると出し抜けに奴と視線がぶつかった。電話片手にニッと笑って片目を瞑られる。
「んじゃ待ち合わせは――」
……どうやら『金ヅル』確保が成功した合図だったようだが、どうも心臓に悪い……。
が、相手はまったく気にしていない。
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2005 |
10,16 |
«28»
何事もなかったように真剣に悩みだす隣の男は、やがて立ち止まりぽんっと手を打った。
――そうだ!直江を呼ぼう!
さも、名案だとばかりに……。
――……?
――東京って場所はなあ。金かければかけるほど美味いものが食えんだよ。
――……。
それはつまり、タカるということか!?
――そなた……直江を何だと思っておるのだ?
――あ?んなの決まってんじゃん~。
『金ヅル』
――……。
――悪いか。
さも当然とばかりにのたまって、
喜々として携帯電話を取り出す。
(……)
「あ、直江ー?」
「……」
――そうだ!直江を呼ぼう!
さも、名案だとばかりに……。
――……?
――東京って場所はなあ。金かければかけるほど美味いものが食えんだよ。
――……。
それはつまり、タカるということか!?
――そなた……直江を何だと思っておるのだ?
――あ?んなの決まってんじゃん~。
『金ヅル』
――……。
――悪いか。
さも当然とばかりにのたまって、
喜々として携帯電話を取り出す。
(……)
「あ、直江ー?」
「……」
2005 |
10,15 |
«27»
雲っていた空はいつのまにか晴れ、静かに月を湛えていた。
「さーてと、――飯でも食いにいきますか――」
隣行く男の視線が捉える景色は夜も眠らないネオン街。
今も眩しく現実を覆い隠している。
色とりどりに眩しく瞬く光はこの男によく似合う。
きらびやかに煌めく中にある譲れないモノを見据えた、
――揺るがない双眸。
清正は口端を綺上持ち上げた。
悪くはない、と思う。
その男の隣を歩くのも――悪くはないだろう。
「ああ、運動したしな。腹が減ったぞ。東京の名物とは何だ?」
悪くはないだろう――が、
「名物ねえ」
「さーてと、――飯でも食いにいきますか――」
隣行く男の視線が捉える景色は夜も眠らないネオン街。
今も眩しく現実を覆い隠している。
色とりどりに眩しく瞬く光はこの男によく似合う。
きらびやかに煌めく中にある譲れないモノを見据えた、
――揺るがない双眸。
清正は口端を綺上持ち上げた。
悪くはない、と思う。
その男の隣を歩くのも――悪くはないだろう。
「ああ、運動したしな。腹が減ったぞ。東京の名物とは何だ?」
悪くはないだろう――が、
「名物ねえ」
2005 |
10,14 |
«26»
それどころか――、
(この男もまた――)
――過去を見ていない眼差し。どんな苦難も乗り越えてきた人物だけが得られるしなやかな強靭さ。
清正の、シャツを鷲掴む手から力が抜ける。一度付いたシャツの皺はそう簡単には戻らないが、それでも元の形状にゆっくり戻っていこうとして――。
――この男もまた、
清正は前を行く男と肩を並べるために一歩を踏み出した。
(景虎を――支えてきた漢――)
それは何も直江信綱だけではないのだ。
盟友の軌跡を最も長く、間近で見続けた人物の一人。
清正は顎を引いた。
(この男もまた――)
――過去を見ていない眼差し。どんな苦難も乗り越えてきた人物だけが得られるしなやかな強靭さ。
清正の、シャツを鷲掴む手から力が抜ける。一度付いたシャツの皺はそう簡単には戻らないが、それでも元の形状にゆっくり戻っていこうとして――。
――この男もまた、
清正は前を行く男と肩を並べるために一歩を踏み出した。
(景虎を――支えてきた漢――)
それは何も直江信綱だけではないのだ。
盟友の軌跡を最も長く、間近で見続けた人物の一人。
清正は顎を引いた。
2005 |
10,13 |
«25»
ブレザーの制服姿の黒髪の少年が隣を歩いて、小突きあっていた。互いが互いを信頼しあっていて――。
清正は目を細めた。
勿論、その光景を清正がこの世で見る機会は失われた――が、
(この男にもおまえは棲んでおるのか――)
約数十年が経った。そう……――あれから随分時間は流れたのに――。
「……」
思い出せば胸を焦がす想念。いまだ風化しきれないその熱情に突き動かされて、清正は己の胸に手をやった。
「どうした?清正」
置いていくぞと笑って言いのける男。
「ああ」
清正へと向けられる表情にはかげりがない。
清正は目を細めた。
勿論、その光景を清正がこの世で見る機会は失われた――が、
(この男にもおまえは棲んでおるのか――)
約数十年が経った。そう……――あれから随分時間は流れたのに――。
「……」
思い出せば胸を焦がす想念。いまだ風化しきれないその熱情に突き動かされて、清正は己の胸に手をやった。
「どうした?清正」
置いていくぞと笑って言いのける男。
「ああ」
清正へと向けられる表情にはかげりがない。
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