2004 |
10,27 |
«レスキュー»
「しかし、景虎様ッ」
高耶は答えない。ただ眉を引き絞るだけだ。
「直江、その辺にしてやれよ」
「…千秋」
顔を泥で汚した千秋。
「俺達はまだまだいける」
見上げる高耶。見下ろす千秋。
「おまえの好きなように命令しろよ」
――大将。
「千秋…」
ニヤリと歪む笑みは余裕。その背後に静かに佇む隊員。千秋と同じ意志を宿して。
(あ――)
やがて高耶の強張った表情は氷解して、瞳には透撤な意志が宿り、こくりと領いて見せた。
「皆!疲れてるだろうが、後少し!後少し頑張ってくれ!」
――頼む。おまえ達が希望なんだ。
たった一つの奇跡を信じて、幼き生命の灯火を消さないために。
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