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だ、駄文

二次創作のくだらない駄文置き場
2024
11,27

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2005
12,26
(私が怒ってるのはッ! 何で怒っているかと言えばッ! 元を正せば……ッ! コイツがッ! コイツがぁッ!!)
 怒りのメーターが振り切れてしまうと返って言葉は出てこないものだ。吐き出そうとしていた言葉の数々が南都の喉元で交通渋滞を起こしている。
「??……ッ」
 ばっと南都は余裕の居候に背を向けた。
 肩はまだ怒っている。しかし、豚に真珠、馬の耳に念仏、糠に釘! な奴を相手にしたって……!
「!」
 突然、無視して先行こうとした南都の視界が淡く白一色になった。
(――え……)
 ぱさり。
「……――」
 一瞬閉ざされた南都の視界が捉えたものは――、
 乳白色のマフラー。
 それは南都の視界を奪っい、行く足を引き止めたウ゛ェールだ。
 ――そして、
 南都は茫然と眼を瞬かせた。
 両肩から伸びるマフラーの穂先。軽く触り心地の良いそれは――。
 南都が千秋の買い物が終わるまで覗いていたショーウィンドウに飾られていたものだ。
「――今日は」
 南都は不意に仰向いた。 南都の両肩を真後ろから掴む居候と南都の身長差は案外、ある。だから、上向けばバッチリとお互い表情はうかがえて。
「ありがとな」
 眼鏡の奥の双眸。
 細められた眼は深い茶褐色で――。
 ぽかんと開けられた口がマフラーに隠されていることをさすがに南都は感謝した。
 ああ……本当に。
(コイツは――)
 いつも嫌味な笑みばかりに表情筋を使っているというのに、こういう時だけは――……。
「…………」
 だんだんとイルミネーションが灯されていく。夕方五時も過ぎればもう夜も同然。きらきらと輝きだす今日は奇跡の日、見渡せば周り中に恋人たちが溢れていた。
 そんな真っ只中、南都は考える。
 紙袋を持ちなおす男前。
 どう見ても南都の連れと分かるこの状況下で、傍目からは荷物持ちの彼氏にしか見えないだろう。
 紙袋のお陰で今日という日に男前度を上げているが……。
 だが??、……しかし!
 片手では持つのが大変だろうそれら全ての紙袋の中身、今日買ったものは――……。
(絶対、詐欺だと思う……!)
 すべて居候・千秋自身の普段着、だったりする……。
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2005
12,25
「…………」
「…………」
 時間はただ静かに流れていく。
 夕食が済めば、食後のお茶をすすり、何気無しにテレビ番組を見ながらコタツにいっそう深く潜りこんでみたり、雑誌や新聞を開いてみたり。
「なぁ。南都」
「…………」
 雑誌を眺めながら、自分が呼ばれていると脳に達するまで少々時間を要した。
(『南都』――?)
 南都は顔を上げた。
 居候が南都を呼び捨てで呼ぶのは珍しかった。というより、初めてかもしれない。
 けれど、居候の視線はテレビに釘付けだ。南都を見ていない。
「……何?」
 ぼーっとした居候の視線はやはり相変わらずテレビ画面上だ。
 んー……と唸って、何するふうもなく首を軽く傾げた。
「来週、暇?」
「…………」
 暇だったら何なのか。
「出かけないか?」
 居候はゆっくりと南都へと顔を向けた。
 あ、と南都は目をみはった。
 こういう顔も出来るのか……、と。
 だから、自然と、どこへ? と問い返していた。
「そうだな」

 ――町に出たいと思う。

 なんだろう。そう言われて南都はその誘いを断る気にはなれなかった。



「だからって!!」
 こういうことは早く言えよ! と居候・千秋の前をずんずん歩く南都が一週間後の町中にあった。
 きしくもそれはクリスマス・イブの日だったりする……!
「そんなに怒るなよ」
 南ぁー都、なんて言って後ろからついてくる居候が心底恨めしいと思う南都であった。
 嗚呼、この居候……世の中を舐めているとしか思えないッ! と南都は憤慨中なのは言うまでもなく。心中では、信じられない……、信じられない……! が連呼&こだましていた。
けれど、この居候……南都の怒りなどまったく気にすることもなく……。
 南都南都南都と――ッ
(しつこいッ!)
 とうとう南都の足はぴたりと立ち止まり、くるりと方向転換した。
「南都南都と……町中で大声で呼ばないでよ! 恥ず―――」
 ――か、しい……。
 南都は我慢の限界だったが??睨んだ先を見て……固まった。
 カッと血が昇るのが南都自身が分かるぐらいに勢いよく頭に血が昇った。もし血圧メーターがあったなら限界まで一気に上昇し、測定不能としたのは間違いない。
 嗚呼……何でコイツはこんなに余裕な表情なのだ……。
2005
12,25
「よ。お帰り」
「……ただいま」
 南都は不機嫌なりにも返事して見上げた。
 居候はお玉片手に南都を見下ろしている。
「んな。可愛い顔で睨むなよ」
 俺困っちゃうだろ、なんて言って台所に戻っていく。
 南都はそんな様子の居候こと千秋をげんなりと眺めてしまう。
 軽口を叩いていていようと、どんなにふざけていようと、この居候……手はきっちりと動いているのだ。南都の言う文句や小言が段々と減っていったのは想像に難くないだろう。
 たったの二週間でこの居候はもう勝手知ったる他人の家だ。
 一つ嘆息して南都は手伝いに向かった。
 彼が台所に立って、南都がその脇に立つ。これももう定位置になりかけている。
 確かに千尋の言う通り、案外巧くやっているのかもしれないと思う南都であった。



「どうした?」
 はっと南都は顔を上げた。
 そこに待ち受けていたのは、不思議そうにした居候の顔だった。
 南都にとって、その涼しげな顔がいっそうムカついて仕方がないのだ……。
「どうしたよ?」
「…………」
 南都は南瓜の煮付けをゆっくり咀嚼しながら、居候から目を離さない。
「俺の顔に何かついてるか?」
 ああ、やんなってしまうと思って噛み砕いていた。
 この居候……顔だけでなく、料理の腕もなかなかなものだ。この居候……なんでもかんでも卒なくこなしてしまう……!
「……別に」
 なんだか悔しくて南都は素っ気なくそう言った。
 すると、居候は取り付く島のない南都に対して眉を八の字に下げた。そして、僅かに笑んだその口許にお椀をあてがった。
「…………」
 それからは居候も南都も黙って料理を突付いた。もくもくと――。
「…………」
「…………」
 ……会話がもたない。
 今に始まったことではないが、南都の親父がいないといつもこうなってしまう。勿論、意地を張っているのは南都のほうだが、居候も敢えて意固地な南都を口説き落とそうとはしなかった。
 けど、二人ともこの沈黙がそれほど嫌いではなかった。寧ろ??。
「…………」
「…………」
 一人ではない空間と思えば――。
2005
12,24
 南都はずずっと茶をすすった。確かにそれはその通りであると南都も思うが、果たして――。
「――……素性も知れない男と付き合える?」
「それはあんたのお父さんのお墨付きでしょう」
「……」
 あれはお墨付きと言っていいものやら……。単に酒呑み仲間なら誰でも良かったような……。ぱっと南都の頭に繰り広げられたのは日毎の酒宴。
「佐々木さんは良くて今回はダメなの?」
「それは――」
「佐々木さんだって素性知れないじゃん」
「……一緒にしないでよ。元から記憶のないのと隠してるのとじゃ大違いよ!」
 そうだ。そうなのだ。南都が千秋を信用できないのはひとえにそこにあるのだろう。
 訳ありなのはなんとなく分かるが、それでも??。
「親父なんて『知らないが、悪い人間じゃない』の一点張りよ!」
 それでは納得がいかない……!
 仮にも家族同様の生活をするのだから。なにも知らず普通に善意で接せられるほど南都の懐は深くない。
「境内に寝てたから、連れ込んだんだっけ?」
「挙げ句、酒盛とお勤めを手伝えば、三食昼寝付き! なんてふざけすぎだっつーのッ」
「あはは! 南都の父親らしい!」
「笑い事じゃないわよ……」
「でも、南都が働かざる者食うべからず! とか言ったら、ちゃんといろいろと手伝ってくれてるんでしょ?」
「それは……」
「いいじゃない? 案外巧くやってんじゃん?」
「…………」
 押し黙る南都とは対照的に千尋はからからと笑った。
 結局のところ南都が相手とどのように相対して良いか分からず困惑しているだけで、相手を嫌いなわけではないのだ。その証拠にこの一週間南都の愚痴の行き着く先は父親に対してであり、居候への愚痴は減る一方である。まあ、本人は無意識のようだが。
「私も彼氏さえいなけりゃアプローチするのになあ」
「しちゃえばいいのに」
「何言ってんの」
「…………」
「そんな顔して」
 さっぱりとした言葉と裏腹に恨めしい上目遣いで千尋を見上げてくる南都に千尋は破願した。
「どんな顔よ?」
「ま、嫌いじゃないなら、次の恋初めてもいいんじゃなーい?」
「千尋」
「さ、早く食べて次の授業行こうか!」
 千尋は気難しい親友の、きつい視線もなんのそのでソテーを頬張ってみせた。
2005
12,23
「で、どうなのよ?」
「……どうなのよってなにが?」
「こらこら。とぼけんじゃないよ」
「……」
「あんたんところの居候さん」
 で? で? と顔に書いてある友人を前にして、南都は溜め息を吐いた。
「べつに……」
 南都は安いが美味い学食のチキンソテーを頬張った。
「あんたねー……。あれだけ格好イイ人を前にしてその反応はどうかと思うよ?」
 と、言われても。
 彼女は見ていない。呑んだくれている奴の姿を。親父みたいにぷはぁあと日本酒を呑む奴の姿を。大の字になって腹をぽんぽんしながら寝る奴の姿を。
 一緒に過ごしていれば、見なくてもいい姿を見てしまうものなのだ。どんなに見てくれが良くても――。
「千尋は……」
 南都は一旦箸を置いて湯飲みを手にした。
「あれのどこがいいのよ?」
 南都の親友、片岡千尋は好奇心旺盛に南都の家の居候を見に来たのだ。
「え! だってあの笑顔~」
 千尋の周りにハートがぱっと散った。
「…………」
「たまんないわ~。それにあの予想を裏切らない美声!」
 いっそう私のことなど気にせず告ってしまえ、と思うほど千尋は冷めていた。
 それが伝わったのだろうか。

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