2005 |
04,06 |
«-偶然-34»
「……」
――二枚の札が掛けられているボトル。
「なんだかなー」
よく分からない、お手上げとばかりに肩をすくめて、頭に手をやる同僚の動向を尻目に――……、
ホールに向かった青年は目を細めて、優しく息を吸い込んだ。
驚愕の想い。弾け飛んだインスピーレーションは知らない男のシニカルな笑み。
だけど、何故か――……衝いて出る言葉は――、
「――Happy……birthday――」
何故そう浮かぶのか。呟いた本人すら判ってはいなかったが――、
ただ、今日と言う日にこそ、
――二枚の札が掛けられているボトル。
「なんだかなー」
よく分からない、お手上げとばかりに肩をすくめて、頭に手をやる同僚の動向を尻目に――……、
ホールに向かった青年は目を細めて、優しく息を吸い込んだ。
驚愕の想い。弾け飛んだインスピーレーションは知らない男のシニカルな笑み。
だけど、何故か――……衝いて出る言葉は――、
「――Happy……birthday――」
何故そう浮かぶのか。呟いた本人すら判ってはいなかったが――、
ただ、今日と言う日にこそ、
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2005 |
04,06 |
«-偶然-33»
――四月……一、日。
「――」
「佐々木?」
納得したのか青年は出し抜けに微笑を浮かべた。
「――何かおまえ、ヘンだぞ」
「そんなことないさ」
と言いつつも、口端が緩んだままでは説得力がない。納得いかないのは、なにもこのバーテンダーの彼だけではないだろう。
だが、一旦大きく息を吐き出した青年は、何事もなかっかのたようにボトル棚にその曰くのボトルをしまってしまう。
「……。その態度がヘンなんだよ……」
まったく、と嘆息しながらホールに向かう同僚からバーテンダーの視線が移された先は――、
「――」
「佐々木?」
納得したのか青年は出し抜けに微笑を浮かべた。
「――何かおまえ、ヘンだぞ」
「そんなことないさ」
と言いつつも、口端が緩んだままでは説得力がない。納得いかないのは、なにもこのバーテンダーの彼だけではないだろう。
だが、一旦大きく息を吐き出した青年は、何事もなかっかのたようにボトル棚にその曰くのボトルをしまってしまう。
「……。その態度がヘンなんだよ……」
まったく、と嘆息しながらホールに向かう同僚からバーテンダーの視線が移された先は――、
2005 |
04,06 |
«-偶然-32 »
押し黙り、
深く息を吐いた。
「――……分からない」
だけど、
「そんな――……」
――気がする。
「ふーん?」
「すみませーん。注文入りまーす!桜カクテルとー……」
「!」
二人はばっと声の主へと注意を寄せた。
「……。りょーかい!」
バーテンダーを務める青年は返事を返して、またも目を瞠る同僚を尻目に用意に取り掛かる。
――『桜』……。
「村井」
「ん?」
「今日は何日だ?」
用意をし始める青年にちらりと視線をやって。聞かれたほうは視線をさ迷わせ、
「四月一日。――エイプリルフール、だな」
深く息を吐いた。
「――……分からない」
だけど、
「そんな――……」
――気がする。
「ふーん?」
「すみませーん。注文入りまーす!桜カクテルとー……」
「!」
二人はばっと声の主へと注意を寄せた。
「……。りょーかい!」
バーテンダーを務める青年は返事を返して、またも目を瞠る同僚を尻目に用意に取り掛かる。
――『桜』……。
「村井」
「ん?」
「今日は何日だ?」
用意をし始める青年にちらりと視線をやって。聞かれたほうは視線をさ迷わせ、
「四月一日。――エイプリルフール、だな」
2005 |
04,06 |
«-偶然-31 »
二十代半ば、外見の軽いイメージから想像もつかないほど、渋い注文が多くて意外だったが、
「やけに女にモてそうな客だった……」
事実ゆったりと座高の高い椅子に腰かける男へは始終、黄色い視線が注がれていた。
モてない男はつらい、といかにもな同僚の態度に青年はくすりと笑んで何気なくボトルにかけられた二枚の札を裏返した。
「!」
その妙な沈黙にバーテンダーはグラスを拭く手を止めた。
「――……ぁき」
青年の引き締まった口からポロリと言葉が雫れ落ちて、
「知り合い?」
その問いに青年は一度何か言おうとしたが、
「やけに女にモてそうな客だった……」
事実ゆったりと座高の高い椅子に腰かける男へは始終、黄色い視線が注がれていた。
モてない男はつらい、といかにもな同僚の態度に青年はくすりと笑んで何気なくボトルにかけられた二枚の札を裏返した。
「!」
その妙な沈黙にバーテンダーはグラスを拭く手を止めた。
「――……ぁき」
青年の引き締まった口からポロリと言葉が雫れ落ちて、
「知り合い?」
その問いに青年は一度何か言おうとしたが、
2005 |
04,05 |
«-偶然-30»
「はは…こればかりは仕方ない」
性分だよ、と青年は腰にエプロンをさっさと巻き付けだす。――だが、
だしぬけに手が止まった。
「?」
「――これは」
バーテンダーもその手を休めて青年の見るものへと視線をやれば、レジスターの隣、
そこには――、
一本のボトル。
「あ――……」
そういえば、キャッシャーの店員に、キープ棚に閉まっておいてくれと言われていた。
「まだ開封されてないな」
青年の手がボトルに伸びる。
「帰り際に、ね。新規のお客さんの」
その客はやけに人目を引いた客だった。
性分だよ、と青年は腰にエプロンをさっさと巻き付けだす。――だが、
だしぬけに手が止まった。
「?」
「――これは」
バーテンダーもその手を休めて青年の見るものへと視線をやれば、レジスターの隣、
そこには――、
一本のボトル。
「あ――……」
そういえば、キャッシャーの店員に、キープ棚に閉まっておいてくれと言われていた。
「まだ開封されてないな」
青年の手がボトルに伸びる。
「帰り際に、ね。新規のお客さんの」
その客はやけに人目を引いた客だった。
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