2005 |
09,27 |
«9»
怨霊の敵意も人間の敵意も両方相手にしてきた。
「今更な話だな」
「!」
ひたと俺は相手を見た。動揺なんてこちらにはさらさらありはしない。
「生きるためにおまえらみたいな馬鹿消してんだろうが」
消して何が悪い。
今更お綺麗なことを言うつもりはねえ。
そう。自分を生きるため――正当化するため、俺はヤツラを消してきた。まるで呼吸するのと同じように。――ごく自然とやってきた。「貴様ッ!!」
「ふん」
それが生き人を助けることに繋がっただけのことだ。
――違う!
「……ッ」
突然、俺の中の誰かが叫ぶ。
「今更な話だな」
「!」
ひたと俺は相手を見た。動揺なんてこちらにはさらさらありはしない。
「生きるためにおまえらみたいな馬鹿消してんだろうが」
消して何が悪い。
今更お綺麗なことを言うつもりはねえ。
そう。自分を生きるため――正当化するため、俺はヤツラを消してきた。まるで呼吸するのと同じように。――ごく自然とやってきた。「貴様ッ!!」
「ふん」
それが生き人を助けることに繋がっただけのことだ。
――違う!
「……ッ」
突然、俺の中の誰かが叫ぶ。
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2005 |
09,26 |
«8»
きっと今にも逃げだしたいに違いない。
それでもその場に必死で留まるのだから、覚悟はあるのだろう。
俺が一歩前に出ると奴らはビクリと反応して睨み上げてくる。
俺は冷ややかに侮蔑を込めた視線を投げてやる。
「――のくせにッ」
とうとう耐えられなくなったのか、チンピラ共はジリッと一歩下がり吠え出した。
「――換生者のくせにッ」
存在自体が脅威とはこのことかもしれない、と冷静に思う。
ああ――言われ慣れた台詞。
チンピラの身体は憎悪でわなないている。
「――換生者のくせにッ!」
ああ――見慣れた断末魔の表情。
それでもその場に必死で留まるのだから、覚悟はあるのだろう。
俺が一歩前に出ると奴らはビクリと反応して睨み上げてくる。
俺は冷ややかに侮蔑を込めた視線を投げてやる。
「――のくせにッ」
とうとう耐えられなくなったのか、チンピラ共はジリッと一歩下がり吠え出した。
「――換生者のくせにッ」
存在自体が脅威とはこのことかもしれない、と冷静に思う。
ああ――言われ慣れた台詞。
チンピラの身体は憎悪でわなないている。
「――換生者のくせにッ!」
ああ――見慣れた断末魔の表情。
2005 |
09,25 |
«7»
「俺たちが誰だか分かってやってんだろうな?」
ざっと俺の前に現れたチンピラ共――憑依霊たちが続々と終結する。ざっと見たところその中に換生者はいないようだ。
随分、ナメられたものだ。
「数で押せば勝てるってもんじゃないことぐらいわかってんだろうな」
換生者と憑依者では力の差は歴然としている。それは子供と大人、いやそれ以上だ。調伏力を抜きにしてもそれは変わりないだろう。
少しでも力のある霊ならその事実を悟ることは容易だ。
その証拠に憑依者たちの間で緊張がにじみ、冷や汗が伝っている。
ざっと俺の前に現れたチンピラ共――憑依霊たちが続々と終結する。ざっと見たところその中に換生者はいないようだ。
随分、ナメられたものだ。
「数で押せば勝てるってもんじゃないことぐらいわかってんだろうな」
換生者と憑依者では力の差は歴然としている。それは子供と大人、いやそれ以上だ。調伏力を抜きにしてもそれは変わりないだろう。
少しでも力のある霊ならその事実を悟ることは容易だ。
その証拠に憑依者たちの間で緊張がにじみ、冷や汗が伝っている。
2005 |
09,24 |
«6»
「迎え討ってやろうじゃなねえの」
俺は余裕の笑みを口許から剥いで、よりいっそう《力》を溜める。
それは四百年間自然に行ってきた動作の一つだ。
もう体内の排泄物を外に吐き出すのと然程変わりなくなったその行為は『あの』戦闘の間に進化した。
漲る力の中に宇宙を感じて身を任す。
念じれば産み出る《力》自体が調伏力となり、それは今まで以上の威力があり強力だ。
自ずと高揚感に満たされて、心は湖面のごとく静まりかえっていく。
「俺に何の用だ?」
だが、すぐさま《力》は発動させない。
俺は余裕の笑みを口許から剥いで、よりいっそう《力》を溜める。
それは四百年間自然に行ってきた動作の一つだ。
もう体内の排泄物を外に吐き出すのと然程変わりなくなったその行為は『あの』戦闘の間に進化した。
漲る力の中に宇宙を感じて身を任す。
念じれば産み出る《力》自体が調伏力となり、それは今まで以上の威力があり強力だ。
自ずと高揚感に満たされて、心は湖面のごとく静まりかえっていく。
「俺に何の用だ?」
だが、すぐさま《力》は発動させない。
2005 |
09,23 |
«5»
(――ワラッちまう)
最も単純で、抗いつづけてきた根底。それを沈めるために、深く肺に空気を溜め込みゆっくりと吐き出した。
――でなければ、生きてなどいけない。
そうして――依存することなく生きてきた!
「……」
立ち昇る己のオーラが闇を照らす。
風を従えて立ち昇りながら揺らめく炎気は真白い。
決して清浄とはほど遠い空気がそれだけで震える。
全てを浄化してしまいそうな凄烈な身の内の《力》は高まり、解放を待つのみ。
――ああ、何度この高揚感を味わってきたか。
ゆっくりと視線を上げる。
ざっと並んだ敵共。
最も単純で、抗いつづけてきた根底。それを沈めるために、深く肺に空気を溜め込みゆっくりと吐き出した。
――でなければ、生きてなどいけない。
そうして――依存することなく生きてきた!
「……」
立ち昇る己のオーラが闇を照らす。
風を従えて立ち昇りながら揺らめく炎気は真白い。
決して清浄とはほど遠い空気がそれだけで震える。
全てを浄化してしまいそうな凄烈な身の内の《力》は高まり、解放を待つのみ。
――ああ、何度この高揚感を味わってきたか。
ゆっくりと視線を上げる。
ざっと並んだ敵共。
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