2005 |
11,16 |
「なん、で……あんたが……」
「……はや、く……!」
佐々木はぎゅっと見も知らぬ青年を抱き締めた。
そうでもしないと見えない力の衝撃に耐えきれない。
佐々木には実は人には視えないものを視る力とともに視えない力から身を守る力を備えていた。けれど、その力で他人を守ったことは当然のことながらないし、もしかしたら自分一人に有効なのかもしれない。また、それ以前に佐々木自身が自由にできるような単純な力でもなく、突然消え失せてしまうかもしれないようなものなのだ。
「……はや、く……!」
佐々木はぎゅっと見も知らぬ青年を抱き締めた。
そうでもしないと見えない力の衝撃に耐えきれない。
佐々木には実は人には視えないものを視る力とともに視えない力から身を守る力を備えていた。けれど、その力で他人を守ったことは当然のことながらないし、もしかしたら自分一人に有効なのかもしれない。また、それ以前に佐々木自身が自由にできるような単純な力でもなく、突然消え失せてしまうかもしれないようなものなのだ。
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2005 |
11,15 |
倒れ込んでくる青年。先程とは逆に佐々木が青年の盾になる。
驚愕に捕らわれていた青年は気が付いてはいなかった。全てが終わっていなかったことに。
冷静さを取り戻していた佐々木だからこそ動けた。そのことに気がつけた。
「な……!」
佐々木は自分のできることを熟知している。勿論、この青年のように霊を消してしまうような真似はできない。
できることは――、
――目に見えない力から身をていして、相手を守ること……!
呆然とするのは、青年の番だった。
「――あんた……」
「……ッ」
視線がかち合う。
驚愕に捕らわれていた青年は気が付いてはいなかった。全てが終わっていなかったことに。
冷静さを取り戻していた佐々木だからこそ動けた。そのことに気がつけた。
「な……!」
佐々木は自分のできることを熟知している。勿論、この青年のように霊を消してしまうような真似はできない。
できることは――、
――目に見えない力から身をていして、相手を守ること……!
呆然とするのは、青年の番だった。
「――あんた……」
「……ッ」
視線がかち合う。
2005 |
11,14 |
青年は何を思っているのか。抑揚のない話方そのままに台詞には感情がない。きっとこれは謝罪というよりも独り言だと佐々木は何故かそう確信していた。そして、その理由をも知っているとどこかで佐々木は思っていた。すると、すっと冷静さが戻ってくる。
「すぐ記憶――……」
――消してやるから。
青年がその後に続けようとした言葉は佐々木には何故か手に取るように分かった。だが、佐々木を見下ろした青年の眼が大きく見開かれた理由までは分からなかった。動揺が走る理由??。
けれど、佐々木は迷うことなく青年の腕を引いた。
「!」
「すぐ記憶――……」
――消してやるから。
青年がその後に続けようとした言葉は佐々木には何故か手に取るように分かった。だが、佐々木を見下ろした青年の眼が大きく見開かれた理由までは分からなかった。動揺が走る理由??。
けれど、佐々木は迷うことなく青年の腕を引いた。
「!」
2005 |
11,13 |
「――バイ!」
「!――ッ」
佐々木は思わず手をかざした。
世界が一瞬にして白に染まる瞬間で、……あった。
「……」
佐々木が腰を抜かしているように呆然と尻餅をついていると、妙な光を放った青年は嘆息してから、ゆっくりと佐々木へと振り返った。
月を背負った青年の顔は思った以上に見惚れるほどに男前であった。それなのに、表情を隠すように眼鏡が掛けられている。
「悪かったな。巻き込んじまって??」
青年は仰ぐように夜空を見上げて言う。佐々木に対しての言葉ではない。彼は佐々木を見てはいない。薄暗い空を見ている。
「!――ッ」
佐々木は思わず手をかざした。
世界が一瞬にして白に染まる瞬間で、……あった。
「……」
佐々木が腰を抜かしているように呆然と尻餅をついていると、妙な光を放った青年は嘆息してから、ゆっくりと佐々木へと振り返った。
月を背負った青年の顔は思った以上に見惚れるほどに男前であった。それなのに、表情を隠すように眼鏡が掛けられている。
「悪かったな。巻き込んじまって??」
青年は仰ぐように夜空を見上げて言う。佐々木に対しての言葉ではない。彼は佐々木を見てはいない。薄暗い空を見ている。
2005 |
11,12 |
一瞬佐々木がかい間見たのはチッという舌打ちした男の顔。
「――ぅぜえ……んだよ……」
佐々木の目は大きく見開かれた。
その男の呟きは佐々木に対してのものではない。けれど、なぜか佐々木の心をえぐって――。転がるオレンジがゆらりと止まる。その隣に置かれた手は青白い光に包まれている――……。
「舐めんなぁぁ…ああ!」
守るように覆い被さっていた男の熱が佐々木から離れていく。風が渦巻き、それでも必死に振り向いてみれば、男の髪から髪止めのゴムが滑り落ちていく。
なびく髪の一本一本までに白いオーラが漲っているのを佐々木は視た。
「――ぅぜえ……んだよ……」
佐々木の目は大きく見開かれた。
その男の呟きは佐々木に対してのものではない。けれど、なぜか佐々木の心をえぐって――。転がるオレンジがゆらりと止まる。その隣に置かれた手は青白い光に包まれている――……。
「舐めんなぁぁ…ああ!」
守るように覆い被さっていた男の熱が佐々木から離れていく。風が渦巻き、それでも必死に振り向いてみれば、男の髪から髪止めのゴムが滑り落ちていく。
なびく髪の一本一本までに白いオーラが漲っているのを佐々木は視た。
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